スーパーの売り場で、かまぼこやちくわの値札が少し変わったと感じたことはありませんか。
おでんの具にも、お弁当にも、お正月のおせちにも使われる、身近な食べ物です。その値段がいま動いています。理由をたどっていくと、日本から遠く離れた海にたどり着きました。
日本かまぼこ協会の専務理事、松本洋一さまにお話をうかがいました。
原料の「すり身」が、世界で取り合いになっている
かまぼこやちくわの主な原料は、魚のすり身です。国内で作られるものもあれば、輸入されるものもあります。そのすり身が、いま世界的に値上がりしています。
きっかけの一つは、南米ペルーの不漁でした。日本経済新聞(2026年8月6日)によると、エルニーニョ現象の影響でカタクチイワシが不漁となり、そこから作られる魚粉の相場が上がりました。魚粉は養殖魚のえさに使われます。魚粉が高くなったことで、アジアの漁師の間では、すり身の原料になるイトヨリダイなどを魚粉用に高く売る動きが増えました。その分、すり身に回る量が減ってしまう。同紙によると、ベトナムから輸入されるイトヨリダイのすり身の単価は、2026年1〜6月で前年の同じ時期より15%上がっています。
北米のスケソウダラも上がっています。日刊水産経済新聞(2026年8月12日)によると、米国アラスカ産スケソウダラの冷凍すり身の日本向け価格は、同じ年のAシーズンに比べて25〜35%上がる形で大筋合意し、主要なグレードは過去最高を更新しました。値上げはこれで6シーズン連続です。
さらに、円安が重なります。産経新聞(2026年8月25日)によると、冷凍スケソウダラすり身の輸入単価は2025年で1kgあたり409円。10年前の2016年と比べて34%高い水準です。同紙は、海外でフィレ(三枚おろし)の需要が伸びるなか、1ドル160円前後の円安もあって日本が買い負けている状況を伝えています。
遠くの海の出来事が、売り場の値札まで届いている。そういう構造になっています。
売り場は、豆腐と納豆の隣
値段が上がると、売り場での見え方も変わります。
「ねり製品が売られている場所は、日配の水物が並ぶ売り場です。納豆や豆腐と同じような棚に置かれています」と松本さまは話します。
その棚を見渡すと、豆腐のほうが安く並んでいる。手に取ってもらうかどうかを分けるのは、やはり価格になる。もともと値ごろで、使いやすいから選ばれてきた食材だからこそ、価格の変化がそのまま効いてしまいます。
作り手の多くは、小さな会社

協会の正会員は390社(2026年3月31日現在)。100年以上続く会社も多いといいます。一方で、業界の構造には偏りがあります。
「大手と呼べる規模の会社は8社ほどで、あとはすべて中小の会社です」(松本さま)
地方のかまぼこ屋は、昔ながらの対面販売を続けてきたところも多く、小さな家族経営の会社も少なくないそうです。そこに、後継者の問題が重なります。
「経営者の高齢化が進んでいます。跡継ぎがいらっしゃらないところも多く、自主廃業や、経営を断念せざるを得ない状況が出ています。いまのように原材料も人件費も上がっている状況は、その流れに追い打ちをかけています」(松本さま)
産経新聞(2026年8月25日)にも、松本さまの「後継者問題もあり、今年は廃業が多くなる」という見通しが掲載されています。
「これまでに例のない複合的危機」という声明
日本かまぼこ協会は2026年6月1日、公式サイトで「水産練り製品の安定供給に関する緊急声明」を公表しました。原料不足とコスト高騰が同時に起きている状況を「これまでに例のない複合的危機」と表現し、政府への要請5項目を示しています。
それでも、協会が伝えようとしていること
協会は、ねり製品のこれからに向けた発信にも力を入れています。その中心にあるのが「フィッシュプロテイン」という言葉です。次の記事では、その取り組みをご紹介します。
売り場でいつもの一本を手に取るとき、その向こう側にある海や作り手のことを、少しだけ思い出していただけたらうれしいです。
まちもぐは、全国のご当地食品を紹介するメディアです。今回お話をうかがった日本かまぼこ協会のように、業界の方々に教えていただきながら、地域の食品と作り手を伝えています。
かまぼこやちくわをつくっておられる方は、無料で商品を掲載していただけます。地域の味を、全国の飲食店や小売店に知っていただく場としてお使いください。







